ジャンパー膝とは?
ジャンプを多く行うスポーツをする方で膝の痛みを感じる方、その痛みもしかしたらジャンパー膝かもしれません。
ここではジャンパー膝について解説したいと思います。
今回の記事でわかることは、以下の通りです。
・ジャンパー膝とは?
・診断と検査
・症状と原因について
・治療方法について
ジャンパー膝とは?
ジャンパー膝とは、その名前の通りジャンプ(跳ぶ、着地)を多く行うスポーツ選手に発症する膝の前の症状のことを言います。ジャンプだけでなく、ダッシュなどのGo&Stopを多く行うスポーツ選手にも多いとされています。
ジャンプやダッシュを繰り返し行うことで、膝を伸ばす機能(大腿四頭筋腱、膝蓋骨、膝蓋腱)に負担がかかることで引き起こされると言われています。
男性に多く、平均年齢は17.4歳と若く、30歳を過ぎたスポーツ選手はまれであったとの報告があります。
どんなスポーツに多いのか?
・バレーボール
・バスケットボール
・サッカー
・陸上競技の走り幅跳びや高跳び
これらのスポーツの特徴は、ジャンプやダッシュなどが多いと言えます。
似たような症状で、オスグッド・シュラッター病(以下オスグッド(内部リンク))というものがあります。
その違いを簡単に、以下にまとめてみました。
・どちらも使いすぎ(オーバーユース※内部リンクを貼っていただけると幸いです。)が原因にありますが、ジャンパー膝は膝蓋腱(お皿と脛の骨の間)に対してオスグッドは脛骨粗面(脛の骨)と痛みが出る場所に違いがあります。
・好発年齢は、ジャンパー膝は12〜20歳に対してオスグッドは小学校高学年から中学校の発育期に多いとされています。
・オスグッドは、状態によって脛骨粗面が出っ張ってくることがあります。
症状でお困りの場合は、ご自身で判断せずにお近くの整形外科を受診することをオススメします。
診断と検査
ジャンパー膝の診断は、以下の方法で行います。
・膝蓋腱を押したときの痛み(圧痛)の有無
・ジャンプや歩行、階段昇降時の痛みの有無
・筋肉や腱に異常がないか超音波(エコー)や、MRI、レントゲンで確認
・膝蓋骨や膝関節に異常がないかレントゲンで確認
※超音波やMRI検査については医師の判断により異なります。
以上の方法で検査を行い、診断を下します。
また、症状の分類分けがありますので簡単に紹介します。
Blazina分類
stage1 | 運動は可能だが終了後に違和感 |
stage2 | 運動中に痛みはあるが、パフォーマンスに影響なし |
stage3 | 痛みが強く運動量が低下し、パフォーマンスに影響を及ぼす |
症状と原因について
ジャンパー膝の症状は以下の通りです。
・膝蓋骨の下側を押すと圧痛がある
・ジャンプや着地で膝の前側に痛みがある
・膝蓋腱の周りが腫れる
・運動した後に痛みが強く出る
これらが、代表的な症状といわれています。
状態によっては、スポーツやジャンプができることがあります。ですが、負担がかかり続けることで、症状の悪化や慢性的な痛みに繋がる恐れがあります。
ジャンパー膝の原因は、選手個人の要因と環境的な要因に分けられます。
それぞれの要因を、以下にまとめてみました。選手の個人の要因
・大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)とハムストリングス(太ももの後ろの筋肉)の柔軟性低下
・お尻周りなどの筋力低下
・股関節、膝関節、足関節の関節可動域制限(関節の動きにくさ)
・運動中の不良姿勢
詳しくは、治療方法(運動療法)で説明します。
ジャンプやダッシュなどの動きは、日常生活以上の負担が膝関節にかかってきます。
岡崎によると、「距躍系のスポーツにおいては、激しいジャンプ・ランニングの繰り返しによって、主に膝蓋靭帯に膨大な負荷(ランニング時は約680kg、ジャンプ時には約1130kgに達する)がかかり、深部の炎症、循環障害、膠原繊維のmicro tearなどを起こす。」1)と言われています。
1)岡崎壮之:ジャンパー膝 体力科学:227~232,1999.
筋力低下や関節可動域制限、運動中の不良姿勢によって、正しい姿勢で衝撃を吸収できないことで膝関節への負担は膨大なものになってしまいます。
一回だけの負担ではなく、繰り返すことで少しずつ進行していきます。
環境的な要因
・シューズの影響
・硬い地面でのトレーニング
・過度なトレーニング
選手個人の要因だけでなく、環境も大切です。身体機能だけでなく、クッション性の低いシューズを履いて硬い地面での運動を行うだけでも負担はかかりやすいです。
(内部リンク:合わせて読みたいシンスプリント)
また、急激な運動量の増加や運動メニューもジャンパー膝の要因の一つになることがあります。
治療方法(リハビリや再発予防も紹介)
ジャンパー膝の治療方法は、以下の方法があります。
・運動療法(リハビリ)
・物理療法(アイシングや電気治療)
・薬物療法(消炎鎮痛剤など)
・手術療法(症状が重症な場合は、手術を行う場合があります)
参考:JOSKAS 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 運動器疾患とスポーツ外傷・障害 vol.1 膝蓋腱炎(ジャンパー膝))
痛みがある場合は、膝への負担を減らすことが重要です。運動量や負荷量、フォームなどを見直す必要があります。
痛みが強い場合は、痛みが出る動きをお休みする必要があります。運動の開始時期などは、主治医の診察にて判断されます。
今回は、症状の悪化を防ぎ再発予防としても重要な運動療法について解説していきます。
主なリハビリメニューは、以下の通りです。ストレッチ
大腿四頭筋やハムストリングスなどの柔軟性を保つ必要があります。
上記の筋肉だけでなく、必要に応じて正常な関節の動きを妨げる筋肉をストレッチしていきます。
ストレッチの注意点は、コチラを参考にしてみてください。(ストレッチの記事への内部リンクを貼っていただけると幸いです。)
関節可動域練習
関節の可動域を広げるだけでなく、正しく関節を動かすことも重要です。
また、膝に負担がかかりやすい方は、股関節や足関節、脊柱(背骨)の動きも悪いことが多いです。
膝に痛みが出ていても、その原因は違うところにあることがあります。
筋力強化
自分の身体を思うようにコントロールするには、筋肉(筋力)は不可欠です。走る、止まる、跳ぶといった場面において正しく筋肉が使えないと上手く体重を支えることができません。その状態で運動を行うと、パフォーマンスの低下だけでなく、ケガのリスクも高まります。
フォームの修正
関節可動域や筋力が十分でも、動き方によっては痛みが出ることがあります。例えば、ジャンプの着地の動作では、スクワットの形で着地することが重要です。症状の悪化や再発予防も含めて、フォームの修正も行います。自主練習指導
ここまでは、リハビリのスタッフと一緒に行う内容でした。ですが、ずっと一緒にリハビリできるわけではありません。そこで、ご自宅でもできるストレッチや筋トレなどを指導していきます。痛みが出たとしても、自分で対処ができるようになることもリハビリの一つだと筆者は考えます。
運動を休むことは、色々と難しいかもしれません。ですが、症状がひどくならないためにも時にはお休みすることも必要です。また、ジャンパー膝だけでなく、その他のケガの予防にも運動療法の重要性を知っていただけたらと思います。
まとめ
今回は、ジャンパー膝についてでした。ジャンパー膝のことを少しでも知っていただければと思います。痛みがある方、そうでない方もぜひ参考にしてみてください。