医療法人社団 弘人会中田病院

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Column症状別コラム

橈骨遠位端骨折

2023/09/02 14:03

橈骨遠位端骨折の基礎知識

「転んで手を着いてから、手首がずっと痛い」

「手首の骨折と言われた」

このような手首の怪我の多くは、橈骨遠位端骨折と呼ばれています。

今回の記事でお伝えするのは、橈骨遠位端骨折の基礎知識です。

橈骨遠位端骨折の疫学や概要、検査方法や治療法、リハビリテーションの中身まで解説しています。

橈骨遠位端骨折と診断されてしまった方や、手首の怪我をしたかもしれない方は、ぜひ読んでみてください。

橈骨遠位端骨折とは

橈骨遠位端骨折は、橈骨(前腕の親指側にある骨)が折れる骨折です。主に手首の近くで起こる骨折です。

男性では人口10万人あたり100〜130人、女性では60〜70歳代では人口10万人あたり300〜400人ほど、年間で骨折されており、屋外で発生することが多い骨折とされています。

参考:(旧版)橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2012

 

また、橈骨遠位端骨折は、脊椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折に次いで発生率が高いとされています。

参考:橈骨遠位端骨折の疫学


この骨折の主な症状は以下の通りです。

・強い痛みと腫れ

・手首の動かしにくさ

・手の力が弱くなる

・手首の変形(骨がずれる場合)

 など

橈骨遠位端骨折の原因とリスク要因

橈骨遠位端骨折の原因は、転倒や事故などにより手首に衝撃が加わることです。

 

橈骨遠位端骨折を発症しやすい要因としては、次のようなものが挙げられます。

・年齢: 年をとると骨は弱くなり、骨折のリスクが増加。

・性別: 女性は男性よりも骨密度が低く、骨折のリスクが高い。

・骨粗鬆症: 骨密度が低下する骨粗鬆症の方は、骨折のリスクが高い。

診断に使用される画像検査


橈骨遠位端骨折の診断には、以下のような画像検査が一般的に使用されます。

レントゲン


レントゲンは、骨折の位置、種類、骨のずれ具合などを確認するのに適しています。医師はレントゲン画像を見て、橈骨遠位端骨折の診断と重症度を判断します。

CTスキャン

CTスキャンはレントゲンよりも、詳細な断層像を撮影し、骨折の形状や骨のずれ具合を確認できます。特に複雑な骨折や、手術の計画に必要な情報を得るために使用されることがあります。

橈骨遠位端骨折の治療法

ここからは、橈骨遠位端骨折の治療法について解説します。

保存療法

橈骨遠位端骨折の治療には、以下のような手術をしない“保存療法”が一般的に選択されます。

橈骨遠位端骨折の初期治療では、手首を固定するためにギプスが使用されます。

骨折の固定が適切に行われた後、手首の可動性や筋力を回復させるための運動療法が行われます。

 

橈骨遠位端骨折の治療は、保存療法が一般的に選択されますが、場合によっては手術が必要なこともあります。

手術療法

橈骨遠位端骨折の治療には、保存療法に加えて手術療法が必要な場合があります。

手術の方法の一つとして、内固定術があります。

 

(h3)内固定術

内固定術は、折れた骨を固定するために行われる手術です。

固定をする手術では、橈骨に金属のプレートやボルトなどの固定器具を使って骨片を固定します。これにより、骨が適切な位置に固定され、骨の癒合や安定化を促進します。

早い時期からのリハビリテーションが重要

橈骨遠位端骨折の治療において、リハビリテーションは非常に重要な要素です。

早い時期からリハビリテーションを行うことで、早期に手首の機能改善を促します。

ここで、リハビリ内容を手術からの時期別でご紹介します。

具体例を見てみましょう。

初期の段階(手術後またはギプス固定期間中)

まずは、痛みの管理が重要です。痛みを軽減するために、氷やアイスパックによるアイシングを行ったり、痛み止めを使ったりします。

また、関節の可動域を維持するために、指や肩など、手首以外の運動が行われます。

中間の段階(ギプス除去後や手術後の一定期間)

このくらいの時期から、徐々に手首の可動域練習を開始します。

マッサージやストレッチなどで、関節の可動域の改善を促します。

可動域練習の他には、筋力トレーニングや日常生活の活動に必要な動作(例:物をつかむ、物を持ち上げる)のトレーニングが行われます。

後期の段階(機能回復に向けて)

機能的な活動: 患者が日常生活の活動に戻るために、実際の活動やスポーツに関連したトレーニングが行われます。

合併症の一般的な例

一定の割合で、橈骨遠位端骨折の合併症が起こることがあります。

考えられる合併症は、以下の通りです。

関節拘縮

骨折部の周りの組織の癒着や、関節の変形などが原因で、可動域の制限が起こることがあります。

神経損傷

骨折によって周囲の神経が傷つくことがあります。神経の損傷の程度により、痛みや痺れ、筋力低下などが起こる可能性があります。

日常生活での予防策

橈骨遠位端骨折は、転倒により骨折することが多くなっています。

なので、橈骨遠位端骨折の予防には、日常生活で転ばないようにすることが重要です。

安全な環境の確保

廊下に物が置いてあったり、夜間起きた時に廊下が暗かったりすると、何気ない物に躓き、転倒する可能性があります。歩きやすい環境に整備し、転倒を予防しましょう。

適度な運動と筋力トレーニング

適度な運動や筋力トレーニングによって筋力やバランスを向上させることで、転倒や骨折のリスクを軽減することができます。

まとめ

今回の記事では、橈骨遠位端骨折について解説してきました。

一般的に多くみられる橈骨遠位端骨折ですが、骨折の程度がひどい場合には、重症化し、治療が長引くこともあります。

骨折が疑われる場合には、医師とよく相談し、適切な治療を早めに受けられるようにしましょう。