橈骨遠位端骨折の基礎知識
「転んで手を着いてから、手首がずっと痛い」
「手首の骨折と言われた」
このような手首の怪我の多くは、橈骨遠位端骨折と呼ばれています。
今回の記事でお伝えするのは、橈骨遠位端骨折の基礎知識です。
橈骨遠位端骨折の疫学や概要、検査方法や治療法、リハビリテーションの中身まで解説しています。
橈骨遠位端骨折と診断されてしまった方や、手首の怪我をしたかもしれない方は、ぜひ読んでみてください。
橈骨遠位端骨折とは
橈骨遠位端骨折は、橈骨(前腕の親指側にある骨)が折れる骨折です。主に手首の近くで起こる骨折です。
男性では人口10万人あたり100〜130人、女性では60〜70歳代では人口10万人あたり300〜400人ほど、年間で骨折されており、屋外で発生することが多い骨折とされています。
また、橈骨遠位端骨折は、脊椎圧迫骨折、大腿骨頸部骨折に次いで発生率が高いとされています。
参考:橈骨遠位端骨折の疫学
この骨折の主な症状は以下の通りです。
・強い痛みと腫れ
・手首の動かしにくさ
・手の力が弱くなる
・手首の変形(骨がずれる場合)
など橈骨遠位端骨折の原因とリスク要因
橈骨遠位端骨折の原因は、転倒や事故などにより手首に衝撃が加わることです。
橈骨遠位端骨折を発症しやすい要因としては、次のようなものが挙げられます。
・年齢: 年をとると骨は弱くなり、骨折のリスクが増加。
・性別: 女性は男性よりも骨密度が低く、骨折のリスクが高い。
・骨粗鬆症: 骨密度が低下する骨粗鬆症の方は、骨折のリスクが高い。診断に使用される画像検査
橈骨遠位端骨折の診断には、以下のような画像検査が一般的に使用されます。
レントゲン
レントゲンは、骨折の位置、種類、骨のずれ具合などを確認するのに適しています。医師はレントゲン画像を見て、橈骨遠位端骨折の診断と重症度を判断します。
CTスキャン
CTスキャンはレントゲンよりも、詳細な断層像を撮影し、骨折の形状や骨のずれ具合を確認できます。特に複雑な骨折や、手術の計画に必要な情報を得るために使用されることがあります。
橈骨遠位端骨折の治療法
ここからは、橈骨遠位端骨折の治療法について解説します。
保存療法
橈骨遠位端骨折の治療には、以下のような手術をしない“保存療法”が一般的に選択されます。
橈骨遠位端骨折の初期治療では、手首を固定するためにギプスが使用されます。
骨折の固定が適切に行われた後、手首の可動性や筋力を回復させるための運動療法が行われます。
橈骨遠位端骨折の治療は、保存療法が一般的に選択されますが、場合によっては手術が必要なこともあります。
手術療法
橈骨遠位端骨折の治療には、保存療法に加えて手術療法が必要な場合があります。
手術の方法の一つとして、内固定術があります。
(h3)内固定術
内固定術は、折れた骨を固定するために行われる手術です。
固定をする手術では、橈骨に金属のプレートやボルトなどの固定器具を使って骨片を固定します。これにより、骨が適切な位置に固定され、骨の癒合や安定化を促進します。
早い時期からのリハビリテーションが重要
橈骨遠位端骨折の治療において、リハビリテーションは非常に重要な要素です。
早い時期からリハビリテーションを行うことで、早期に手首の機能改善を促します。
ここで、リハビリ内容を手術からの時期別でご紹介します。
具体例を見てみましょう。
初期の段階(手術後またはギプス固定期間中)
まずは、痛みの管理が重要です。痛みを軽減するために、氷やアイスパックによるアイシングを行ったり、痛み止めを使ったりします。
また、関節の可動域を維持するために、指や肩など、手首以外の運動が行われます。
中間の段階(ギプス除去後や手術後の一定期間)
このくらいの時期から、徐々に手首の可動域練習を開始します。
マッサージやストレッチなどで、関節の可動域の改善を促します。
可動域練習の他には、筋力トレーニングや日常生活の活動に必要な動作(例:物をつかむ、物を持ち上げる)のトレーニングが行われます。後期の段階(機能回復に向けて)
機能的な活動: 患者が日常生活の活動に戻るために、実際の活動やスポーツに関連したトレーニングが行われます。合併症の一般的な例
一定の割合で、橈骨遠位端骨折の合併症が起こることがあります。
考えられる合併症は、以下の通りです。関節拘縮
骨折部の周りの組織の癒着や、関節の変形などが原因で、可動域の制限が起こることがあります。
神経損傷
骨折によって周囲の神経が傷つくことがあります。神経の損傷の程度により、痛みや痺れ、筋力低下などが起こる可能性があります。
日常生活での予防策
橈骨遠位端骨折は、転倒により骨折することが多くなっています。
なので、橈骨遠位端骨折の予防には、日常生活で転ばないようにすることが重要です。安全な環境の確保
廊下に物が置いてあったり、夜間起きた時に廊下が暗かったりすると、何気ない物に躓き、転倒する可能性があります。歩きやすい環境に整備し、転倒を予防しましょう。
適度な運動と筋力トレーニング
適度な運動や筋力トレーニングによって筋力やバランスを向上させることで、転倒や骨折のリスクを軽減することができます。
まとめ
今回の記事では、橈骨遠位端骨折について解説してきました。
一般的に多くみられる橈骨遠位端骨折ですが、骨折の程度がひどい場合には、重症化し、治療が長引くこともあります。
骨折が疑われる場合には、医師とよく相談し、適切な治療を早めに受けられるようにしましょう。