半月板損傷とは
「特に心当たりはないけど、長年膝が痛い」
「膝の曲げ伸ばしをするときに引っ掛かる感じがする」
「膝が伸びにくくなった」
「運動中に膝を捻ったら痛くなった」
みなさんは、このような経験はありませんか?
テレビなどのスポーツコーナーで、「半月板損傷で長期離脱」というのを聞いたことがあると思います。半月板損傷は、スポーツ選手に起こるというイメージがあるかもしれませんが、スポーツ選手だけではありません。
半月板損傷は、スポーツ中の怪我だけではなく、長期にわたり微細な負荷がかかることで痛みが発生したり、損傷したりすることがあります。
半月板とは?(機能と役割)
半月板は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間にあります。内側と外側にあり、Cのような形をしています。
半月板の主な役割は、以下の通りです。
- 大腿骨と脛骨にかかる、圧力の軽減1)
- 関節を安定させる
- 関節をスムーズに動かすために、関節同士の摩擦を減らす
- 正しい膝の動きの補助
具体的には、膝関節にかかる圧力は通常の歩行では、体重の約2.5〜3倍、階段昇降では、4倍を超える1)といわれています。
普段何気なく行っている動きは、膝関節にとっては大きな負担がかかっていると言えます。半月板は、その負担を減らすための大きな役割を担っているのです。
半月板損傷の症状
半月板損傷の症状は、以下の通りです。
- 疼痛
- 腫脹
- ロッキング(ひっかかり感)
ひっかかり感が頻繁に続くようであれば、手術療法が適応となる場合があります。
また、痛みが出る動きはさまざまですが、体重がかかった状態で膝を曲げて捻る動きが加わると最も痛みが出やすいことが特徴的です。
半月板損傷の原因
半月板損傷は、スポーツ選手だけでなく一般の人にも起こります。スポーツ外傷のような受傷もあれば、加齢に伴う変性による断裂や損傷もあります。
<スポーツ外傷>
半月板損傷をしやすいスポーツの代表例は以下の通りです。
1、バスケットボール
2、サッカー
3、スキー
4、バレーボール
5、ラグビー
タックルなどの接触プレーだけでなく、急激なストップや切り返しなどの非接触プレーでの受傷もあります。
半月板損傷は、膝が曲がった状態での大腿骨の強い捻れが関係しています。その時、膝関節の中では、半月板は挟まれたり、押しのけられたり、捻れたりして損傷や断裂をします。
<加齢に伴う半月板損傷>
中高年の方の半月板損傷は、スポーツ外傷というよりも、加齢による変性と摩耗が原因で半月板損傷が起きるとされています。
半月板損傷の病態
半月板損傷には、いくつかの種類があります。
- 線維に沿って断裂する「縦断裂」
- 垂直に断裂する「横断裂」
- 水平面上に断裂する「水平断裂」
さらに重症化した状態は、以下の通りです。
- 縦断裂と横断裂が組み合わさった「フラップ断裂」
- 縦断列がひどくなった「バケツ柄断裂」
これら二つの状態では、ロッキングの症状が強く出現し、ゴリッとした痛みが出るのが特徴的です。
半月板損傷の診断
半月板損傷が疑われる場合は、MRIによる画像診断と医師による整形外科テストを組み合わせて診断します。
整形外科テストでは、膝を曲げながら捻り、半月板に負荷をかけて痛みを誘発させて検査をします。
代表的なテストとして、McMurray(マクマレー)が一般的です。
半月板損傷の治療
半月板損傷の治療は、損傷した場所や程度によって、保存療法と手術療法に分けられます。
<保存療法>
手術をしない保存療法では、患部の安静や抗炎症薬などの薬物療法、リハビリテーションを行います。また、足底版など体重のかけ方を変えて、半月板への負担を減らす方法もあります。
<手術療法>
手術療法は、日常生活やスポーツ場面などでのひっかかり感やロッキングなどの症状を考慮し、医師が判断します。
手術方法は主に、縫合術と切除術があります。損傷した場所や程度、断裂度合いによって手術の方法が変わります。
スポーツ復帰のタイミング
術後のリハビリを進めるうえで、当院ではプロトコール(リハビリのスケジュールのようなもの)を参考にリハビリを進めています。
同じ半月板の手術でも、縫合術と切除術では手術の方法が違うためそれぞれプロトコールは決められています。
<切除術後プロトコール>
・3-6週〜 ジョギング
・2ヶ月〜 ノンコンタクトプレーのみ徐々に開始
・2-3ヶ月〜 競技復帰
<縫合術後プロトコール>
・6-8週〜 プール内ジョギング
・12週〜 ジョギング
・3ヶ月半〜 ノンコンタクトプレーのみ徐々に開始
・4-5ヶ月〜 競技復帰
あくまでも、プロトコールなので運動開始の際は、医師の判断が必要です。
まとめ
半月板損傷は、スポーツをしている方だけでなく、日常生活で微細な負荷が積み重なることでも起こります。
膝に違和感や痛みを感じる方は、お近くの整形外科を受診することをオススメします。
参考文献
- Donald A. Neumann「筋骨格系のキネシオロジー」,医歯薬出版株式会社, 2012年7月 577ページ