オーバーユースとは
冬場の走り込みやトレーニング期間による練習量の増加、休日以外のクラブチームの練習など、スポーツをしている人は誰もが経験があることではないでしょうか?
子どもたちは、まだ成長過程にあり練習量の調整やフォーム確認と修正、練習後のケアなどは重要です。現在、少年野球では一日の投球数やイニング制限などの提案もされている地域も出てきました。
「休んでしまうとレギュラーを取られてしまう」
「勝ち進むために、連投しないといけない」
こういったことは、スポーツの場面ではよくあることだと思います。
そこで、今回はオーバーユースについてお話ししてきます。
オーバーユースとは?
オーバーユースとは、一回の外力では問題にならない微細な外力が反復することで組織に障害を与える1)ことと言われています。いわゆる、「使いすぎ」の状態です。
現在は、スポーツの世界において慢性的な痛みに悩む選手も多く、オーバーユースによるものを「スポーツ障害」と呼ばれるようにもなりました。
スポーツ障害とスポーツ外傷の違い
スポーツ障害というワードが出ましたが、スポーツ外傷という言葉もあります。似たような言葉ですが、意味は大きく異なります。違いは、以下の通りです。
<スポーツ障害>
一回の外力では問題にならない微細な外力が反復することで、組織に障害を与えること。
<スポーツ外傷>
骨折や脱臼、捻挫など比較的大きな一回の外力によって生じた障害のこと。
似たような意味合いでも、大きな違いがあります。
オーバーユースで起こる障害
オーバーユースによる代表疾患は、以下の通りです。
・野球肘
・テニス肘
・疲労骨折
・ランナー膝
成長期の子どもに起こりやすい障害から、成人でも起こりうる障害もあります。
どんな人がなりやすいのか
オーバーユースの原因は、個人的な要因と環境的な要因に分かれている2)とされています。
以下に簡単にまとめてみました。
<個人的な要因>
1.年齢・性別:
発育期(特に、急激に身長が伸びる時期)では、骨の成長が急激に起きるので、筋肉や腱に対して伸ばされるようなストレスがかかりやすくなります。中・高年者では、筋肉や軟骨などで衝撃を吸収する機能が低下するため、障害が起こりやすくなります。 性別では、女性は骨盤の大きさなどもあり姿勢の変化が生じやすくなります。また、ホルモンバランスの崩れによる骨粗鬆症にも注意が必要です。
2.既往歴:
今まで、ケガや手術をしたことがある方も注意が必要です。特に、股関節や膝関節、足関節などに既往歴がある方は、身体の使い方が変わってしまうため二次的な障害の予防が大切といえます。
3.コンディショニング
身体も車と同じように、メンテナンスは不可欠です。筋力不足(手術後も含めて)や運動後のケア不足などは、オーバーユースの原因となります。
4.不良姿勢:
脚長差(脚の長さの違い)やX脚、扁平足などはその場所に負担が偏ってしまいます。動作は姿勢の連続ですので、正しい姿勢に修正することが、予防につながります。
すべての人に、正しい理想的なフォームができるわけではありません。その人に合った、フォームの指導が重要です。
<環境的な要因>
1.負荷量と頻度:ランニングの走行距離や投球数、テニスのセット数など量的な問題も挙げられます。ランニングの損傷に関して、James2)は、60%以上がトレーニングの失敗によるものと報告しています。また、少年野球では、1日最大70球とし、連続する2日間で105球としています3)。しかし、個人差や環境、技術など条件は大きく変わってしまうため、その人その人の状態を把握することが大切です。
2.天気・気温:
冬の寒い季節や天候では、ウォーミングアップが重要です。大衆ランナーにおける調査でも、秋から冬にかけて約2倍の障害が発生している4)との報告もあります。ウォーミングアップだけでなく、体温が奪われないように暖かい格好をして運動することをオススメします。
個人的、環境的な原因をまとめてみました。オーバーユースは、ただ「使いすぎ」だけではなく、筋力不足や身体の硬さなどによって一箇所に負担がかかることで起こってしまいます。
この記事を読んでいただいた方は、これを機にご自身の身体を見直してみてはいかがでしょうか?
ストレッチや筋トレについては、当院ホームページの動画情報を参考にしてみてください。
オーバーユースの診断
オーバーワークという診断名ではなく、「オーバーユースで起こる障害」でも述べたように、疾患名がついてきます。
疲労骨折のような骨折を疑われる場合は、レントゲンを用いて診察を行います。また、シンスプリントのような、レントゲンでは写らないものはMRIやエコーを使用します。
それ以外にも、医師による検査にて診断を行います。
オーバーユースの治療と予防
オーバーユースの治療と予防には、安静や練習量の調整、リハビリが重要となってきます。前述したように、関節や筋肉の硬さや筋力低下、動作の修正などは、専門的な知識が必要です。身体の作りや動きの特徴、痛みの場所・訴えは、人それぞれです。その原因を突き止め、改善することが重要です。
まとめ
今回は、スポーツの場面での話が多くなってしまいましたが、それだけではありません。お仕事で大きな鍋を毎日使う、細かい作業で指を駆使する、といったことでも障害は起こります。
そういったことから、身体のケアはとても大切です。皆様のお身体を労ってあげてください。
参考文献
- Renstrom, P, and Johnson, J.:“Overuse injuries in sports” Sports Medicine,2,316-333,(1985)
- James,S. L.et al.: “Injuries to runners” Amer.J.Sports Med., 6,40-50(1978)
- (公財)日本少年野球連盟企画運営部 小学生投手の投球制限ガイドライン(新)2022年版
- 中嶋寛之他:昭和45年度日本体育協会スポーツ科学研究報告No V “大衆ランナーの整形外科的研究所”.(財)日本体育協会スポーツ科学委員会.